【TBSドキュメンタリー映画祭 2026】『矛盾に抱かれて 音楽 建築 哲学 悲哀 循環』 優しい世界への第一歩は「2つの身体を愛す」こと

ドキュメンタリーの時代

2026年。世はまさに激動。
多様性と言われる一方で、テロや移民犯罪が増加し、世界的にナショナリズムの波が訪れ、持続可能性と言われる一方で、100円ショップ、ファストファッション、中国産の安い商材がサプライチェーンを支配しています。

ここ1年で人々は急速にAIへの依存度を高め人々の意識や社会構造が変わっていく中、相変わらず人間は戦争だけはやめません。ウクライナだけでなく中東、南米でも戦火が上がり、米中・日中関係も緊張し、我々は多くの情報操作や世論工作を仕掛けられている危ない国民・日本にいるのに、【何故か】危機感を持つ事なく、比較的のんびり過ごしています。

しかし、日本という国を根本から揺るがす圧倒的な情報操作や、経済支配、戦争の危機、文化の危機はすぐそこまで来ています。
こういう時こそ我々は「真実を求め」様々な視点を探ります。

ドキュメンタリーは、テレビ放送のニュースでは表現しえない、事実や現象の奥に潜む真実に迫ります。
TBSは地上波テレビ局でありながら、このドキュメンタリー映画の開発に熱心に取り組み、監督=記者たちの長年に渡る記者の観察や情熱や好奇心によって、様々な挑戦的な作品や、思いもよらぬ視点に気づかさせてくれるような作品が生み出されています。

2026年で、TBSドキュメンタリー映画祭は6回目となりました。もはや去年の常識が通用しなくなるかもしれない早い変化の世の中で生きていく我々にとって、この映画祭は新たな指針を提供してくれると思います。正しいどうかは皆さんで判断されればよいのです。とにかく見て楽しんで新しい視点を身に着けていただければと思います。

 

『矛盾に抱かれて 音楽 建築 哲学 悲哀 循環』
優しい世界への第一歩は「2つの身体を愛す」こと

文:抹茶猫(今年こそホラーを克服したい)

「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇になる」
20代も半ばを過ぎると友達と会って話すなんて機会さえ限られてくるのもあり、そんな貴重な機会を得られて思い出話に花が咲くたびに、このチャップリンの名言が胸に沁みるようになってきた今日この頃。かつての悲劇があってこそ出会えた人や巡り合えた場所がある訳で、長い目で人生を見つめる余裕みたいなものを少しずつ獲得できている実感はあるのですが、ふとした時に「じゃあ、もしあの時あの悲劇が起こらなければ?」とよぎってしまうのも事実なんです。第一志望だった高校に落ちていなければ?あの告白が失敗していなければ?コロナウイルスが流行していなければ?かつての悲劇を肯定したい自分と否定したい自分が同居する「矛盾」。本作は、筆者含めそんな「矛盾」を抱えるすべての人におすすめしたい一本です。

フルート奏者/建築家の畠山秀幸さんの思考、バックボーン、そして生き様を映し出す本作。一見全く別々の類に思える音楽と建築ですが、この2つを常に背中合わせかのように捉えている畠山さん。音楽について思考している時に建築のアイデアが浮かぶということもあると言い、その逆もまたしかり。「音楽のような建築 建築のような音楽」を編み出し/奏でる彼は、あるアドバンテージを得たことで新たな世界が拓かれたのだと語ります。ラッキーとさえ語るそれは、病気の後遺症として残った「右半身のまひ」でした。

本来あるべきはずであり存在している方が何をするにも便利なはずの感覚を失ったことで「異なる2つの感覚を持つ身体」を得たという畠山さんは、まひした右半身とまひしていない左半身による対話により創造を膨らませていくのだと語ります。前述した筆者が抱える矛盾というのは、それを思い浮かべたときに「いまさら考えてもどうにもならないことを考えている」と感じ、モヤモヤを抱えて結果ネガティブな感情に支配されることが多い、が故にふとした時に度々思い起こされるのだろうと思うのですが、その矛盾を武器として使いこなす畠山さんのパッションととある哲学に基づく整理された思考に圧倒されてしまいます。同じく今回の映画祭で上映される『劇場版 盗るな撮れ~罪と少年とケーブルTV~』を紹介した文章内でも同じことをプッシュしていますが、一見不利だと捉えられかねない事象を個性として、武器として認めることの偉大さといいますか、その決断を下せる度量の大きさに胸を打たれた時の感情は「すごい」の一言などでは消化しきれない力があり、もれなく本作もそうした力を目の当たりにする体験を味わえる一本となるでしょう。

左手のみで演奏ができる特注のフルートを片手に、畠山さんは全国各地でその美しい音色を奏でます。沖縄や広島では平和への想いを馳せる慰霊演奏、北海道では参加者が稲刈りを行っている最中に演奏を行う「生演奏付き稲刈り」など、その活動範囲は多岐に渡りますが、その発端には矛盾を愛し、慈しむ心と「対話」を重ねてきたからこそ生まれた思考がある。異なる2つをどちらも受け入れる、そしてそれにより得た物を自身の武器として磨いていく力強い思考がそれです。あらゆる風景の中に優しく溶け込んでいく畠山さんの演奏から、ぜひそんな背景も思い浮かべてみてください。

監督:時崎愛悠
編集:八尾真理子
撮影:小林大樹、宮形徹、中野修一
音声:大島空
MA:西岡俊明
CG:長崎洸祐
プロデューサー:山﨑裕侍

 

<開催概要>

「第6回 TBSドキュメンタリー映画祭2026」
2026年3月13日(金)より東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催される。
※一部の作品は上映されない会場があります。

東京:ヒューマントラストシネマ渋谷|3月13日(金)〜4月2日(木)
大阪:テアトル梅田|3月27日(金)〜4月9日(木)
名古屋:センチュリーシネマ|3月27日(金)〜4月9日(木)
京都:アップリンク京都|3月27日(金)〜4月9日(木)
福岡:キノシネマ天神|4月3日(金)〜4月16日(木)
札幌:シアターキノ|4月4日(土)〜4月10日(金)

主催:TBSテレビ
公式サイト:https://tbs-docs.com/2026
公式X:@TBSDOCS_eigasai

戻る