【コラム】『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』世界を魅了し続けた“キング・オブ・ポップ”最後の姿――幻のラストステージに刻まれた情熱と愛|ドキュメンタリー映画[初心者]が観る!はじめての20本【第7回】
ドキュメンタリーに興味はあるけれど、どこから観ればいいのか分からない――
そんな“初心者の目線”から、国内外の作品を紹介していきます。難しい前提知識や専門用語には頼らず、作品の面白さと、ドキュメンタリーの見方の入り口を探っていきます。
第7回:『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』
世界を魅了し続けた“キング・オブ・ポップ”最後の姿――幻のラストステージに刻まれた情熱と愛
こんな人におすすめ!
・音楽エンターテイメントが好きな方
・ポップスターの舞台裏が気になる方
・もっとマイケル・ジャクソンについて知りたい!と思った方
ドキュメンタリーゲージ(★5段階)
親しみやすさ :★★★★☆
インパクト :★★★★☆
考えさせられる度:★★☆☆☆
いま観る意味 :★★★☆☆
現在も大ヒット上映中の『Michael/マイケル』。言わずもがな、伝説のポップスターの人生を描いた映画です。彼の全盛期を知っている世代はもちろんのこと、当時まだ生まれていなかった世代からの支持も熱く、国内だけで興行収入70億円を突破しています。
筆者とマイケル・ジャクソンの繋がりはというと、おそらく小学生の頃、彼の訃報が夕方のワイドショーで何度も何度も流れていたのをよく覚えている程度。テレビで偶然見た彼のパフォーマンスに不思議な魅力を感じたこともあります。そんな一介の小学生すらふと魅了されてしまうのだから、世界中が大熱狂したのも納得です。
そして大人になり、彼の伝説を伝記映画を通して目の当たりにした今、ドキュメンタリーを観ずにはいられないと思うようになりました。そこで今回紹介するのは、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』。「THIS IS IT」はマイケルが亡くなる直前まで準備をしていた公演の名称で、このドキュメンタリーはそのリハーサルの様子を捉えたものです。彼がこの世を去るほんの少し前の姿を捉えている貴重な映像でもあります。
この公演の演出および本作の監督はケニー・オルテガ。『ハイスクール・ミュージカル』の監督として知っている人も多いことでしょう。まさに“魅せる音楽”に精通する彼が見たマイケル・ジャクソンは、一体どんな姿なのでしょうか。
■本番さながらのリハーサル映像にゾクゾク
マイケルの伝説的ステージとなるはずだった「THIS IS IT」。本作ではその謎めいたベールが、リハーサル映像とともに剥がされることとなります。
ただリハーサル映像と言っても、まるでライブを見ているかのように、マイケルのパフォーマンスが次から次へと繰り出されていきます。舞台演出も大迫力で、花火が画面を彩るシーンも登場。また客席には観客の存在を思わせる場面もあり、「もし公演が行われていたら……」という想像が掻き立てられます。
何より、マイケル自身がとても楽しそうで、観ているだけで自然と口角が上がってしまうこと間違いなし。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、これが彼の持つ魔法なのか、と感激するほどでした。
■仲間たちと創り上げる、“キング・オブ・ポップ”の裏側
演出のケニー・オルテガに加え、振付師のトラヴィス・ペインやプロの音楽家、若きダンサーたち、そして技術スタッフたちとの細かなやりとりも合間に映し出されます。ミュージカル・ディレクターのマイケル・ベアデンは、映画の中でマイケルについて「すべてを把握して指示を出す」「自分の曲はテンポもキーも熟知してる」と話しています。だからこそ、より良い音楽を突き詰められるのでしょう。
そのなかでも、マイケルが「怒ってない。 “愛”なんだ」という言葉を添えて自らの意見を言うシーンや、彼の頭の中にあることを一緒に言語化しようと寄り添う周囲の姿勢も見逃せません。そこにはプロフェッショナル特有の厳しさだけではなく、“優しさ”が溢れていました。もちろん映っていないところでは、ピリピリしたムードだってあったと思います。それでもあの柔らかな空気感があるのは、マイケル・ジャクソンが中心にいるからなのではないでしょうか。
また、本作の冒頭に描かれる、マイケルと共演することを大きな夢としているダンサーたちの姿にも心が動かされる人も多いはず。それぞれどんな想いを抱えて、この公演に挑んでいたのか。音楽への情熱と真剣さを持ち合わせるマイケルが軸にいるからこそ、その周りを固める人々が抱える想いも人一倍強かったのだろうと感じずにはいられません。
「世界に愛を取り戻そう」
マイケルはこう言いましたが、これは現代に生きる私たちにも変わらず響くものでしょう。これを観終わった人々の心には、少なくともマイケルから届いた愛が温かく灯るに違いありません。
ミュージシャンの伝記映画はエンターテイメントの集大成とも言え、観た後には力をもらえる人も多いことでしょう。一方でドキュメンタリーには、そこに“リアル”という重みが乗っかって、自分事としても吸収することができる面白さがあります。何より、彼らが刻んできた歴史をわかりやすく追体験できるのがいいところ。ドキュメンタリーを通して当人の姿や時代の雰囲気を感じながら、様々な視点に触れてみるのもいいかもしれません。

文:伊藤万弥乃
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語の勉強中。
『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』
2009年製作/111分/アメリカ
原題:Michael Jackson’s This Is It
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場公開日:2009年10月28日
配信:Amazonプライム、U-NEXT、Netflix ほか



