【コラム】『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』(2024)|ドキュメンタリー映画[初心者]が観る!はじめての20本【第8回】

ドキュメンタリーに興味はあるけれど、どこから観ればいいのか分からない――

そんな“初心者の目線”から、国内外の作品を紹介していきます。難しい前提知識や専門用語には頼らず、作品の面白さと、ドキュメンタリーの見方の入り口を探っていきます。

第8回:『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』(2024)
その「即ポチ」、本当に自分の意思? 巨大企業の内側から警告する衝撃作

こんな人におすすめ!
・音楽エンターテイメントが好きな方
・ポップスターの舞台裏が気になる方
・もっとマイケル・ジャクソンについて知りたい!と思った方

ドキュメンタリーゲージ(★5段階)
親しみやすさ :★★★★☆
インパクト  :★★★☆☆
考えさせられる度:★★★★★

いま観る意味 :★★★★☆

これを読んでいるあなたは、ネットショッピングをする時、何を基準に「これを買おう!」という気持ちになりますか?

SNSを見ている時、気になる広告が出てくれば「もう2度と出てこないかもしれない」とクリックしてしまう。もしくは、有名人が紹介しているからと、何となく買ってしまうかもしれない……。どれも悪いことではありませんが、どういった企業の意図があって、その消費はどういうことにつながる可能性があるのか、知っておくのも今後の自分、そして地球の未来には重要になってくるでしょう。

そこで紹介したいのが『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』です。実際にAmazonやApple、adidasで重要な役割を務めていた人々が登場し、企業の内側から社会に対して警告していく姿を描いています。

■買わせる/捨てさせる仕組みが根付いた現代

この作品は大きく5つのチャプターに分けられていますが、その中でもより衝撃的なのは最初の2つ。作品にグッと引き込んでくれるテーマとなっています。

今の時代はスマホ1つで買い物ができ、即日配達される仕組みもあります。しかしその便利すぎるシステムの裏には、過剰な生産があり、さらにはその製品がすぐに使えなくなる仕組みが作られているということが語られていくのです。

本作に欠かせないのは、AmazonでUXデザイナーとして15年間働いていたマレン・コスタの存在。彼女の言葉には何よりも説得力と重みがあり、彼女自身が抱える罪悪感もひしひしと伝わってきます。そして私たちも消費者として企業が作り出したその仕組みの一端を担っていることにも、強く気付かされます。

また、企業に勤めていた人々の発言と共に流れる映像もかなり衝撃的。消費者や労働者が撮った実際の映像に加え、消費量を可視化した映像も流れるため、かなりインパクトがあります。

■大量生産・大量消費がもたらすこと

後半では、専門家によって、各製品に記載されているリサイクル表示が必ずしも正しいとは言えず、また世界的なプラスチックのリサイクル率は10%にも満たないことが明かされていきます。これもかなりショッキングな内容……。現実には、企業によって隠されている事実もあるということです。

そんな社会の中で、私たちがすべきこと・できることは何なのか?専門家たちがそれぞれの視点で、消費者の私たちを導いてくれます。しかしそこからどのように考えて、どのように行動するかは自分次第。少なくとも彼らの言葉や実際の映像が、自分の生活を考え直すきっかけとなるはずです。

さらに印象的なのは、2050年の年間廃棄物は東京の中心部を埋め尽くす量になるという説明が登場すること。日本に住む私たちにとっては、これがどれほどのことであるか、より強く感じるに違いありません。

このドキュメンタリーは、実際に働いていた人々の声を取り入れながらも、テンポよく話が移り変わっていくため、飽きることなく観続けられるのが特徴だと言えるでしょう。また、気が滅入る内容の後に笑える動画が差し込まれるという、何とも言えない独特な編集もポイント。そこかしこに製作陣の意図を感じる作品です。

本作を観た後、すぐにできることはたくさんあります。自分の生活や購買意欲をガラッと変化させるのは難しいことですが、「このドキュメンタリーのことを忘れずに生きていくことから始めよう」という気持ちにさせられる作品です。

 

文:伊藤万弥乃
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語の勉強中。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

 

『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』
2024年製作/84分/アメリカ
監督:ニック・グリーン
原題:Buy Now: The Shopping Conspiracy
配信:Netflix独占配信

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