【コラム】『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』 忙しい毎日、ひと呼吸おきたい人にオススメのドキュメンタリー!|ドキュメンタリー映画[初心者]が観る!はじめての20本【第1回】
映画・ドラマライターの伊藤万弥乃です。今回から、この「
普段は日本と韓国の映画やドラマを中心にコラムを執筆しているの
こうした経験から、
第1回
『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』
忙しい毎日、ひと呼吸おきたい人にオススメのドキュメンタリー!
こんな人におすすめ
・ドキュメンタリーは「難しいもの」だと思ってきた人
・便利な毎日に疲れていて、立ち止まるきっかけがほしい人
・誰かの生き方を通して、自分の現在地を確かめたい人
ドキュメンタリーゲージ(★5段階)
親しみやすさ :★★★★★
インパクト :★★★★☆
考えさせられる度:★★★★★
いま観る意味 :★★★★☆
というわけで2026年1発目、そして記念すべき特集1回目となる今回取り上げるのは、1月9日(金)より劇場公開される映画『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』。この記事を読まれている皆さんは、山登りは好きですか?初日の出を見るために最近山に登ったという人も多いかもしれません。筆者は散歩は好きなのですが山登りをした経験は多くなく……東京近郊だと千葉の鋸山には登ったことがある、その程度でした。
それでもこの映画を観てからというもの、山を見るたびに感じることが変わりました。リアルを描くドキュメンタリーだからこそ、心に芽生える感情や追体験できるものがより近く、人生に深みが増していくような気がします。ドキュメンタリーとしてもハードルが高いものではなく、山小屋に勤める人々の、まるで実家のような温かさを感じることができる作品です。
■山が若者たちの逃げ場所・再スタート地点に
この映画で映し出されるのは、名前の通り、八ヶ岳にある山小屋で働く人々の様子。最初に根石岳山荘の佐藤誉起さんが紹介されます。便利な生活から解き放たれ、新たな自分・環境を求めて、山小屋にやってくる若者も増えているとのこと。
何かに忙殺され疲れ切ってしまった時、山や海など自然を求める瞬間がある人も多いのではないでしょうか?本作にも佐藤さんを含め、そんな人々が登場します。山小屋が登山者の味方であるように、山自体も人々の拠り所として存在しているのです。
しかし、ただ山と共存するだけでは現状が維持できなくなっているという現実も突きつけられます。鹿による食害によって自然が壊されて、さらには土砂災害が起きて事故にも繋がる……鹿の生命も考えると簡単に片付けられる問題ではないことも自覚しながら、自然を守ることに真剣に取り組んでいる山小屋の主人たちがいることも知ることができました。
■穏やかなだけではない山の恐ろしさ
その後、さらに山の恐ろしさも目の当たりにすることになります。山小屋に来るはずだった登山客が何時間経っても来ないのです。結局無事、山小屋にたどり着くことが出来ましたが、そういう時でも二次被害を防ぐため、山小屋の人たちもむやみに動くことはできません。だからこそ山岳診療や山岳救助といった事前の体制整備も必要になってくるのでしょう。
また、人々が山の下の生活を“下界”と言うように、それほどに山は高くそびえ立っているので、歩荷やヘリコプターでの物資輸送も欠かせません。しかし雪山を歩いて越えたり、天気が変わりやすい山の上をヘリコプターが飛んだりするのは簡単ではなく、いろんな人の協力があって成り立っているのだと心が温かくなりました。
「今の人たちは自分の実力を知らない」
「いつも自然が優しく受け入れてくれるわけじゃない」
わかってはいても、ついスマホの中にある情報にばかり頼ってしまって、自分自身や自然と向き合うことを蔑ろにしてしまいますよね。登る側も山小屋を守る側も、本気でやらなければ命にかかわること。都会では便利な生活の中で気を抜いて暮らせていても、山に来れば自分自身の本領を発揮せざるを得ない。だからこそ自分と向き合い、真の力を実感できる場所として人々が愛するのでしょう。
ちなみに筆者は、山岳医療や山小屋の跡継ぎ問題などの現実をドラマ『マウンテンドクター』(フジテレビ系)を観て初めて知ることになりました。同作は長野県にある病院を舞台に、山岳医療に携わる医師たちを描く作品。登山は楽しいけれど、同時に命も奪いかねない。その恐ろしさと山の偉大さを教えてくれるドラマでした。
そして今回『小屋番』を観て、さらにその現実的な部分に直面し、フィクションとドキュメンタリーという差はあれど、その事実に興味を持たせる映像作品の力を改めて実感しました。映像作品という入りやすいメディアだからこそ、フィクションとドキュメンタリーを連続して観てみると新たな発見があるかもしれません。
『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』
1月9日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・撮影・MA:深澤慎也(TBS ACT)
プロデューサー:永山由紀子
出演:菊池哲男(山岳写真家)
エグゼクティブプロデューサー:津村有紀
総合プロデューサー:須永麻由、小池博
協力プロデューサー:石山成人、塩沢葉子、和田圭介
進行プロデューサー:鈴木秀明、尾山優恵
製作:TBS
配給:KeyHolder Pictures
宣伝:KICCORIT
2026年/日本/85分/5.1ch/16:9
©TBS
公式HP:koyaban.com
公式X:@koyaban _movie




