【ドキュメンタリスト・ダイアリーズ #10】『死刑宣告の女性弁護士 アフガンからの脱出』監督:加古紗都子
作り手たちの“生の声”をそのまま届ける企画「ドキュメンタリスト・ダイアリーズ」!作り手自らが作品で描くテーマや問題提起、想いなどを執筆した記事を紹介し、ドキュメンタリストの真髄と出会う<きっかけ>を提供します。
今回は、「TBSドキュメンタリー映画祭2026」上映作品『死刑宣告の女性弁護士 アフガンからの脱出』の加古紗都子監督からご寄稿いただきました!
監督:加古紗都子
1986年生まれ、兵庫県神戸市出身。2009年にTBSテレビ入社。これまでに政治部、デジタル編集部、社会部、『報道特集』を担当。現在は社会部記者。性暴力やジェンダー、児童虐待など、女性や子どもを取り巻く社会問題をテーマに取材を続けている。1男1女の母。報道の世界を志したのは、学生時代にバックパッカーとしてインドに滞在中、少女たちの人身売買の現場を目の当たりにしたことがきっかけ。2023年のTBSドキュメンタリー映画祭で『魂の殺人~家庭内・父からの性虐待~』を監督。同年、ウガンダの元子ども兵士への取材を元に制作した絵本『少女兵士ピチャ』を出版。全国の自治体や小中学校で、子どもたちに“世界と平和”について伝える取り組みを行っている。
女性の権利が抑圧されるアフガニスタンの現状
2021年8月。
イスラム原理主義組織・タリバンがアフガニスタンの首都・カブールを制圧し、約20年ぶりの統治が再開しました。
タリバンが政権の座について間もなく、アフガニスタンでは、女性の権利を抑圧する動きが加速しました。女性たちは公の場で顔や身体を覆うことが義務付けられ、夫や親族の付き添いなしに一人で外出することも出来なくなりました。中学生以上の女子教育も禁じられ、多くの少女たちの夢や希望が奪われました。
加えて耳にするようになったのが、女性活動家や前政府の関係者たちが、タリバンに迫害され、命の危険に晒されているというニュースです。
記者として、女性や子どもの人権問題をテーマに国内外で取材を続けてきた私は、この現状を何とか伝えたいと思い、当事者や支援者の方たちにアプローチを始めました。
そのような中で出会ったのが、アフガニスタンの人たちを国外に退避させる活動を行う、認定NPO法人『REALs』理事長の瀬谷ルミ子さんです。
「司法関係者や警察官、女性活動家。アフガニスタンの社会正義のために活動してきた人たちが、次々と殺されている」―。
中東やアフリカ各地で、外交官や国連PKOの職員として勤務してきた瀬谷さんは、カブールが陥落した直後から、300人余りのアフガニスタン人を、国外に退避させてきました。
取材を始めた、2023年の夏。瀬谷さんを通じて知り合ったのが、弁護士のファティマさん(仮名)でした。
名門・カブール大学で修士号を取得し、17年間、弁護士や検察官として活動してきたファティマさんは、家庭内の暴力が絶えないアフガニスタンで、多くの女性たちの離婚を成立させてきたという理由で、タリバンから“死刑宣告”が下されていました。
そして、持病を抱えた長男をはじめ、4人の子どもと夫とともに、一家で2年近く潜伏生活を続けていたのです。
本作は、ファティマさん一家が命を懸けてアフガニスタンから脱出する過程に加え、行く先々で直面する、“排外主義”の現状も描いていています。
世界で急速に広がる“排外主義”
2024年末時点で、約1億2320万人。
日本の人口を上回る数の人たちが、紛争や迫害、暴力などによって、故郷を追われています。
そのうち、アフガニスタンの難民は、約600万人。
カブールが陥落した2021年8月以降に急増し、パキスタンやイランなど周辺国をはじめ、日本やアメリカ、ドイツといった先進国にも逃れています。その後も、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザにおける紛争など、戦争や紛争が日常となる一方、ファティマさんたちを取り巻く環境はよりいっそう、厳しさを増しています。
日本でも、ここ数年、「難民」や「移民」に対するネガティブなイメージが一部で広まり、排外主義的な思想や言説が散見されるようになりました。映画では、ファティマさん一家のストーリーに加えて、妹と母親とともに日本に退避し、難民として認定された、フルート奏者の青年・ジャムシッドさんの日常にもスポットを当てています。
アフガニスタン、パキスタン、ドイツ、そして日本の4か国で、2年にわたり取材した、難民たちの生活。本作をご覧いただき、これからの世界で私たちが難民問題にどう向き合うべきか、考えるきっかけにしていただければと思います。
『死刑宣告の女性弁護士 アフガンからの脱出』
監督:加古紗都子 ©TBS
排外主義が広がる世界で
新たな人生を切り拓く難民たちの物語。
タリバンに“死刑宣告”され、極限状態で潜伏を続ける弁護士ファティマさん(仮名)一家。日本の支援者を頼り脱出を試みるが、難民を取り巻く現実は厳しい。彼らは無事に国境を越えられるのか――。
「第6回 TBSドキュメンタリー映画祭2026」
2026年3月13日(金)より東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催
※一部の作品は上映されない会場があります。
東京:ヒューマントラストシネマ渋谷|3月13日(金)~4月2日(木)
大阪:テアトル梅田|3月27日(金)~4月9日(木)
名古屋:センチュリーシネマ|3月27日(金)~4月9日(木)
京都:アップリンク京都|3月27日(金)~4月9日(木)
福岡:キノシネマ天神|4月3日(金)~4月16日(木)
札幌:シアターキノ|4月4日(土)~4月10日(金)
主催:TBSテレビ
公式サイト:https://tbs-docs.com/2026
公式X:@TBSDOCS_eigasai




