【TBSドキュメンタリー映画祭 2026】『受忍の国 報道1930劇場版』この時代の「正義」とは何か?決めるのは現実を受け止めた後のあなただ!

ドキュメンタリーの時代

2026年。世はまさに激動。
多様性と言われる一方で、テロや移民犯罪が増加し、世界的にナショナリズムの波が訪れ、持続可能性と言われる一方で、100円ショップ、ファストファッション、中国産の安い商材がサプライチェーンを支配しています。

ここ1年で人々は急速にAIへの依存度を高め人々の意識や社会構造が変わっていく中、相変わらず人間は戦争だけはやめません。ウクライナだけでなく中東、南米でも戦火が上がり、米中・日中関係も緊張し、我々は多くの情報操作や世論工作を仕掛けられている危ない国民・日本にいるのに、【何故か】危機感を持つ事なく、比較的のんびり過ごしています。

しかし、日本という国を根本から揺るがす圧倒的な情報操作や、経済支配、戦争の危機、文化の危機はすぐそこまで来ています。
こういう時こそ我々は「真実を求め」様々な視点を探ります。

ドキュメンタリーは、テレビ放送のニュースでは表現しえない、事実や現象の奥に潜む真実に迫ります。
TBSは地上波テレビ局でありながら、このドキュメンタリー映画の開発に熱心に取り組み、監督=記者たちの長年に渡る記者の観察や情熱や好奇心によって、様々な挑戦的な作品や、思いもよらぬ視点に気づかさせてくれるような作品が生み出されています。

2026年で、TBSドキュメンタリー映画祭は6回目となりました。もはや去年の常識が通用しなくなるかもしれない早い変化の世の中で生きていく我々にとって、この映画祭は新たな指針を提供してくれると思います。正しいどうかは皆さんで判断されればよいのです。とにかく見て楽しんで新しい視点を身に着けていただければと思います。

 

『受忍の国 報道1930劇場版』
この時代の「正義」とは何か?決めるのは現実を受け止めた後のあなただ!

文:抹茶猫(今年こそホラーを克服したい)

「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び..」でお馴染みの玉音放送。昭和天皇が自らの声で国民に終戦を告げたその日から昨年で80年の月日が経ちました。さて、この80年という期間、当時を生きていない方はどう捉えるでしょうか。かくいう筆者も平成生まれとあって当時を生きた経験は無いのですが、やはり学校の授業で学んだ知識やテレビ番組で見聞きした情報をどれだけ深堀ろうとも、興味を示そうとも、想像を巡らせようとも「当時を生きた人たち」の気持ちを完全に理解することは出来ないと思うのです。同じ80年でも、感じる重みは間違いなく違う。ですが本作は、そんな節目にぜひ「自分事」として見届けて、向き合っていただきたい一本となっています。

戦後唱えられてきた「受忍論」というキーワードから日本ってどういう国なの?というテーマにまで波及していく本作。そもそも受忍論とは?というところですが、「戦争被害は国民が皆等しく耐え忍ぶべし」という考え方を指します。先述した玉音放送の一節同様、申し訳ないけどとにかく耐えて!忍んで!という当時の国からの強烈かつ一方的な思いが感じ取れるのではないでしょうか。ですが、その一方で戦時中に功績を上げて重要な職務を果たした人物やその遺族には「軍人恩給」と呼ばれる補償金手当が。その総額60兆円に対して民間人への補償はゼロ。果たして、これはあるべき戦後補償の形なのか?前総理の石破氏へのインタビューや、日本と同じく敗戦を経験したドイツへの取材、さらには空襲で母と弟を亡くした当事者である女性の思いを通じて「受忍論」が浸透した戦後日本における補償対応の実態と現状が、観る者へと届けられます。毎年テレビ番組やラジオ番組を中心に選出される「ギャラクシー賞」において、2024年度(第62回)に奨励賞を受賞した内容に追加取材を交えた劇場版として、この度TBSドキュメンタリー映画祭2026上映作品にラインナップされました。

にしても60兆円対0円…!?当時を生きたか生きていないか以前に、またこの現実が良いのか悪いのかは別として同じ日本国民への補償対応にこれだけの差がついていることに、誰でも衝撃と疑念が押し寄せるはず。先述した当事者の女性は、この差を埋めようと国会前に立ち続け、在るべき補償対応の形を国に訴え続けています。本作は、そうした現在進行形の物語であるということが見どころのひとつでもありますが、筆者としてはそことは別に「本作を一度観たくらいでは、誰が正しくて誰が正しくないのか理解できない」点がミソではないかと強く推したいのです。

「正義なんか簡単にひっくり返る」

昨年の前期朝ドラとして記憶に新しい「あんぱん」の中で印象的だったセリフです。のちに「アンパンマン」を世に送り出すやなせたかし(ドラマでは「やないたかし」)が戦地で強烈に感じたこと、のちに妻となるのぶが「お国のため」と子どもたちに戦争教育を施し、やがて後悔する姿..。何が正しくて、何が正しくないのかを自問する2人の姿に胸を締め付けられた方も多いかと思います。そんなフレーズが本作を鑑賞していると頭をよぎるのです。国家総動員で自国の勝利を目指すことが「正義」だった当時とそうではなくなった現在。きっと今この時代を生きる私たちにも、そうやって「正義がひっくり返った」経験が大なり小なり様々なシチュエーションであるのではないでしょうか。時代が変われば正義が意味するものも変わる。本作で描かれるのは、そうした時代のうねりが生んだあまりにも計り知れない現実なのだと思います。

誰もが笑える未来は程遠いかもしれない。だけど考え続けることは止めてはいけない。理解しようとする姿勢を解いてはいけない。ぜひ、この現実を受け止めて時間をかけて咀嚼してみてください。

監督:石川瑞紀
取材:松原耕二
語り:篠原梨菜
撮影:有田毅
編集:村田良介
ディレクター:川村麻衣子、川本靖子
チーフプロデューサー:貞包史明
[2026年/68分 ©TBS]

 

<開催概要>

「第6回 TBSドキュメンタリー映画祭2026」
2026年3月13日(金)より東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催される。
※一部の作品は上映されない会場があります。

東京:ヒューマントラストシネマ渋谷|3月13日(金)〜4月2日(木)
大阪:テアトル梅田|3月27日(金)〜4月9日(木)
名古屋:センチュリーシネマ|3月27日(金)〜4月9日(木)
京都:アップリンク京都|3月27日(金)〜4月9日(木)
福岡:キノシネマ天神|4月3日(金)〜4月16日(木)
札幌:シアターキノ|4月4日(土)〜4月10日(金)

主催:TBSテレビ
公式サイト:https://tbs-docs.com/2026
公式X:@TBSDOCS_eigasai

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