【コラム】『スーパーサイズ・ミー』なぜ人はジャンクフードをやめられないのか――“食”を巡る30日間の実験生活|ドキュメンタリー映画[初心者]が観る!はじめての20本【第5回】
ドキュメンタリーに興味はあるけれど、どこから観ればいいのか分からない――
そんな“初心者の目線”から、国内外の作品を紹介していきます。難しい前提知識や専門用語には頼らず、作品の面白さと、ドキュメンタリーの見方の入り口を探っていきます。
第5回:『ディズニーランドを創ったクラフトマンたち』
なぜ人はジャンクフードをやめられないのか――“食”を巡る30日間の実験生活
こんな人におすすめ!
・食事を疎かにしてしまっている人
・食品業界/広告の仕組みに興味がある人
・実験的な映像作品が好きな人
ドキュメンタリーゲージ(★5段階)
親しみやすさ :★★★★★
インパクト :★★★★☆
考えさせられる度:★★★★☆
いま観る意味 :★★☆☆☆
体に良くないとわかっていても、とてつもなくファストフードが食べたくなる瞬間が誰にでもあるのではないでしょうか?筆者は『パルプ・フィクション』を観た後、猛烈にハンバーガーを食べたくなったことがあります。手に取りやすく、わかりやすい美味しさがある。そんなファストフードに着目した実験的映画が『スーパーサイズ・ミー』です。
とある少女たちが「肥満原因はファストフード会社にある」とマクドナルドを訴えた事件。その訴訟を担当した判事は「毎食食べることが著しく危険」と示せれば再提訴できると彼女たちに伝えた――この話を起点とし、監督であるモーガン・スパーロックが自らを実験台にすると語るところから始まります。彼は30日間マクドナルドを食べ続け、複数の医者や専門家による管理の下、どのような影響があるかをレポート。一日3食、30日で全メニューを網羅することなどをルールとして設定しました。
このように、自分ではできないような体を張った実験を追体験できるのもドキュメンタリーの魅力。特にアメリカの食事情や“スーパーサイズ”という概念を知ることができるのも興味深いです。そんな映画を観て、初めて知ったことや興味深かった点を振り返ってみようと思います。
■胃もたれするかも?当時のアメリカの食文化とは
もしかすると、これを読んでいる方の中には普段から健康に気を遣って生活している人も多いかもしれませんが、筆者はファストフードが食べたくなれば食べ、野菜やフルーツなどフレッシュなものを欲すれば身体が求める通りに摂るという、本能に従った生活をしてきました。だからこそ本作にはハッとさせられるシーンが多くありました。
2004年に公開された本作。監督が自ら行う実験だけでなく、当時のアメリカの肥満率や、極端な食生活をしていた人が至った病気、肥満に悩む人々のリアルな声が映し出されていきます。実際の声を聞いてみても、(日本人の筆者からすると)ファストフードを食べる頻度はかなり多いという印象です。学校でフライドポテトやクッキーが普通に支給されているのも衝撃的でした。飲み物として炭酸飲料を飲む子もいる。日本での栄養が考えられた給食や、親が作ってくれたお弁当がどれほど自分の体に良い影響を与えていたのだろう……と振り返るきっかけになり、そこには世界のどこかで本当に起きていることを捉えたドキュメンタリーだからこその説得力がやはりありました。
■生活に浸透しているマーケティングの影響とは?
また、企業のマーケティングについても問題提起が。マクドナルドでは子供たちが魅力的に感じる遊び場がついている店舗もあり、さらには親しみやすいキャラクターやハッピーセットも生み出されました。そして子供たちが「行きたい!」となれば自ずと大人もついてきますよね。先述の通り、筆者もまんまと映画に影響されてハンバーガーを食べたくなったことがあります。そのような宣伝方法によって「行きたい!食べたい!」という気持ちが加速し、中毒のごとく通うようになるということが示されています。
さらに、健康な給食によって生徒たちの行動が変化したという調査結果があるにもかかわらず、すべての学校でそのような食事が導入されていない背景にもまた、お金の問題や企業の思惑が付きまとってきます。確かにスーパーに行っても、健康な食事にしようと思ったらかなりの食費がかかってしまうのも事実。不健康な食事は比較的安価で手に取りやすく、わかりやすい美味しさで満足感もあります。私たちは自分がやりくりできる範囲で、体(と心)に良い食事を摂るにはどうしたらいいか、自分の命のために常に考えなくてはなりませんね。
食べないという選択は簡単なことなのに、目先の美味しさと手軽さを求めて、つい食べてしまうファストフード。実際に食べ続けたらどうなるのか、監督自身の結果を目にすると、考え直さずにはいられません。
作品を俯瞰してみると、初心者でも親しみやすい作品であることがわかります。モーガン・スパーロックによる実験が主軸となっているため、話がマーケティングや肥満率の話になったとしても必ず彼のレポートに戻ってきます。逆に言うと、彼の動向を追いながら、社会的な現状も同時に学ぶことができるのです。だからこそ“ドキュメンタリー初心者”にもうってつけの作品と言えるでしょう。

文:伊藤万弥乃
海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語の勉強中。
『スーパーサイズ・ミー』
2004年製作/96分/アメリカ
原題または英題:Super Size Me
配給:クロックワークス、ファントム・フィルム
劇場公開日:2004年12月25日
配信:Amazonプライム



