書を捨てよ、テレビを観よう「TBSレトロスペクティブ映画祭」 <第1回:寺山修司特集> 開催決定!ビジュアル&予告編&場⾯写真 解禁!
TBS収蔵の貴重なドキュメンタリーフィルムをデジタル修復して劇場公開する「TBSレトロスペクティブ映画祭」が、4月26日(金)よりMorc阿佐ヶ谷にて開催することが決定した。第一回目は昭和の鬼才・寺山修司の特集。TBSの社員であり映画監督としても活躍する佐井大紀によるセレクションで、寺山修司の軌跡を辿る傑作5番組、そしてその影響を色濃く受けた佐井大紀監督のドキュメンタリー2作品も上映される。
今回、映画祭の開催決定に併せて、本特集の予告編とポスタービジュアル、場面写真が解禁された。
<上映作品ラインナップ>(作品解説:佐井大紀)
●「あなたは•••••」(デジタル修復版)(1966年11月20日放送)
メディア史に燦燦と輝くテレビドキュメンタリーの伝説的傑作
「あなたにとって幸福とは何ですか?」ハンドマイク一つしか持たない素人の女子大生が、まるで機械のように、決められた17の質問を町ゆく人にぶつけていく。フランスの映画監督・人類学者ジャン・ルーシュの「シネマ・ヴェリテ」に影響されたディレクター萩元晴彦が、盟友・寺山と仕掛けた記念碑的作品。デモ隊の先頭、挙式中の花嫁、在日米兵など取材対象は様々。しかしなぜだろう、それらの問いは、観客である我々自身に向けられている気がしてならない。
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
音楽:武満徹
●「日の丸」(HDリマスター版)(1967年2月9日放送)
“偏向番組だ”として政府がTBSを調査、タブー化された問題作
建国記念の日が初めて施行される2日前、寺山と萩元は『あなたは•••••』と同じ手法を用いて「愛国心」をテーマに制作したのが本作。「日の丸といったらまず何を思い浮かべますか?」「家庭と祖国のどちらを愛していますか?」といった質問を矢継ぎ早に投げかけていく。放送後には“偏向番組だ”として郵政省がTBSに事情聴取を行った。入社して受けた新人研修で本作に衝撃を受けた私は、拙作『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』を監督するに至る。
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
●「中西太 背番号6」(デジタル修復版)(1964年7月14日放送)
詩的なナレーションが光るスポーツドキュメンタリーの先駆的作品
若くして西鉄ライオンズの監督となった天才野球選手、中西太。1964年6月7日、福岡県平和台球場で行われた西鉄ライオンズ対東映フライヤーズ第15回戦の実況中継に、貧困から這い上がった中西の栄光と孤独に満ちた半生を絡ませていく。「プロ野球のスカウトというのは今様の人買いであり、プロ野球の球場は、買われた若者たちの人生を懸けた孤独な劇場なのである」この冒頭ナレーションだけでもう、寺山の仕事だとわかってしまう。
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
●「サラブレッドーわが愛―大障碍の記録―」(HDリマスター版)(1964年10月13日放送)
競馬を愛する寺山が手がけた躍動感あふれる意欲作
1964年10月11日、千葉県中山競馬場で行われた大障碍レース。フジノオーとタカライジンの対決を軸に、騎手、調教師、厩務員、そしてサラブレッドの人生を描く。リマスターされた映像を観た私は、得も言われぬ感動に打ち震えた。馬の毛並みの美しさ、山本直純が手掛ける劇伴の艶やかさ、そして熾烈なレースを繰り広げるクライマックスの、一切ピントを狂わすことなく競走馬を捉え続けるカメラワークの超絶技巧に。これらのディテールこそが、本作の真価を謡いあげている。
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
音楽:山本直純
●「勝敗 第一部・第二部」(デジタル修復版)(1965年10月5日・12日放送)
寺山の文学性とテレビメディア論がぶつかり合った隠れた傑作
萩元がテレビの“中継性”を見出したという『第一部』。坂田栄寿名人と林海峯八段の第四期囲碁名人戦の模様を4台のカメラと同時録音で収録。最小限のナレーションと両者の表情・手つき・呟きなどから、緊張感漂う現場の時間そのものを伝える。しかし翌週放送された『第二部』は一変、物語は思いもよらない展開を見せ、THE寺山作品へと変貌していく。ヒッチコック『サイコ』のような巧みな構成に貴方も翻弄されるがいい。
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
音楽:武満徹
●「日の丸~寺山修司40年目の挑発~」(2023年2月24日公開 配給:KADOKAWA)
TBSドキュメンタリー史上最大の問題作が、半世紀の時を経て現代に甦る
『日の丸』放送から50年後の2017年、 新人研修で本作に出会った私は、メディア論的な実験精神と社会に切り込む挑発性を持った作風に強い衝撃を受けた。「現代に同じ質問をしたら…?」二つの時代を対比させ「日本」や「日本人」の姿を浮かび上がらせようと、私は自ら街頭に立った。様々な実験がなされていた60年代をノスタルジックに振り返るのではなく、その普遍的な新しさを後継しテレビが成熟しきった現代に一石を投じる作品を目指した。
監督・編集:佐井大紀
出演:金子怜史、安藤紘平、シュミット村木眞寿美、今野勉
語り:堀井美香、喜入友浩(TBSテレビ)
イラスト制作:臼田ルリ
●「カリスマ~国葬・拳銃・宗教~」(2023年3月17日公開)
「あなたの人生の主役は誰ですか?」取材対象を追わない反ドキュメンタリーへの挑戦
当初は『エキストラ』というタイトルだった本作だが、“エキストラ”の観察とは不在の“主役”の強調を意味していた。両者のイメージが観客の脳内で共存したとき、自ずと社会構造が立ち上がる。“国葬”をテーマに山上徹也と永山則夫、統一教会とイエスの方舟を比較。一見関係ないモチーフを追うことで本当に追いたい対象を想起させるこの手法こそ、“情報伝達”というジャーナリズムの呪縛から解放された新しいドキュメンタリーの文法であり、寺山的アプローチの後継でもあると信じたい。
監督・編集:佐井大紀
構成:寺坂直毅
出演:千石まさ子、千石恵
イラスト制作:臼田ルリ
TBSレトロスペクティブ映画祭の企画について
昨今「テレビはオワコンだ」とよく聞くが、かく言う貴方は本当の“テレビ”を知っているのか?
TBSではテレビ黎明期から現在に至るまで、メディア論を根本から問う名作ドキュメンタリーが数多く制作されてきた。しかしそれらの多くは、放送後ほとんど視聴の機会に恵まれず、暗く冷たいテープ倉庫の中で今も静かに眠ったままなのだ。そこで私は独断と偏見でいくつかのフィルムを取り出し、デジタル修復して世に再発表する「TBSレトロスペクティブ映画祭」を企画した。
第1回は、拙作『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』の原型である『日の丸』を手掛けた巨人・寺山修司特集。フィルムの保存状態によって修復に限界があった作品も少なくないが、作品そのものが持つ熱量と説得力は今でも我々の胸に迫ってくる。故きを温ね新しきを知る…そうこれこそが、自由で可能性に満ちた“テレビ”の本来の姿なのだ!第2回、第3回の作品選定の合間を縫い、私も大画面のスクリーンで堪能したいと思う。
TBSレトロスペクティブ映画祭企画 映画監督 佐井大紀
「TBSレトロスペクティブ映画祭」
4月26日(金)Morc阿佐ヶ谷ほか全国順次ロードショー!
企画・プロデュース佐井大紀
エグゼクティブ・プロデューサー大久保 竜
プロデューサー津村有紀
テクニカル・マネージャー宮崎慶太
製作著作:TBS
配給:TBS DOCS
©TBS
公式X:@tbs_retro
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