731部隊の闇に迫る――ドキュメンタリー映画『医の倫理と戦争』11月22日より緊急公開

戦時下の医療従事者による加担と沈黙、そして現代の医療現場が抱える倫理の問題を掘り下げるドキュメンタリー映画『医の倫理と戦争』が、11月22日(土)より渋谷・ユーロスペースで公開される。監督は『命の行方』など社会派ドキュメンタリーで知られる山本草介。公開初日から連日、医師や研究者らを迎えたゲストトークも実施される予定だ。

戦後80年を迎えるいま、医療従事者による戦争犯罪の加担と沈黙、そして現代の医療倫理を問うドキュメンタリー映画『医の倫理と戦争』が、11月22日(土)より渋谷・ユーロスペースにて緊急公開される。あわせてポスタービジュアル、予告編、場面写真が解禁され、企画者・伊藤真美と監督・山本草介のコメントも到着した。公開初日からは、医療関係者や識者を迎えた連日のトークイベントも予定されている。

本作は、第二次世界大戦中に日本陸軍が行った人体実験部隊「731部隊」を軸に、戦後の日本医学界に連なる構造を照らし出すドキュメンタリー。731部隊に所属した医師たちは、人体実験で得た“知見”を自らの功績に変え、戦後の日本医学界の中枢に上り詰めたとされる。作品では、そうした歴史的事実を追うとともに、いま「戦争に備える」という言葉が再び聞かれる現代日本の医療現場を取材。国家と医療、そして“倫理”の関係を見つめ直す。

企画を手がけた伊藤真美は、「戦争に備えることは、国策に動員され戦争に加担していく過程であったことを歴史から学ばなければならない。医療者こそ“戦争を起こさないこと”に全力をあげるべき」と語る。さらに、「ナチス・ドイツに匹敵する日本の医療者による戦争犯罪の事実は、医療者自身さえ詳らかに知らない。戦後、アメリカとの密約のもとでその過去は覆い隠され、現在の医療界が形成されてきた。だからこそ、私たちは“医の倫理”とは何かを根本から問い直さなければならない」とも訴える。彼女が掲げるのは、世界医師会の倫理マニュアルにある一文――「倫理は法よりも高い基準の行為を要求し、ときには法に従わないことを求める」。その言葉を体現するかのように、伊藤は本作を通じて、法や制度に流されず“人間としての良心”に従うことの意味を問いかける。

監督の山本草介は、「命を救う“医”と命を奪う“戦争”ほどかけ離れたものはない。だからこそ、この映画を世に出す必要があると感じた」と語り、「撮影を通して、“医”に携わる人が必ずしも“戦争”に抗う立場ではない現実を知った。かつて医療者は実験と称して大量殺人を行い、今も反戦運動をする医療者は職場で異端とされる。命を救おうとするその手が、体制の中でいつの間にか命を奪う側に回る危うさを、僕は目の当たりにした」と振り返る。さらに、「患者を見送る医療者の笑顔の尊さを知っているからこそ、その笑顔を奪うような社会を見過ごせない。戦争が起これば、どれほどの努力も一瞬で無に帰す。だからこそ、今この時代にこの映画を届けなければならない」と強い思いをにじませる。

公開期間中は、山本監督による舞台挨拶のほか、日替わりで多彩なゲストを迎えたトークイベントを実施予定。医療、報道、法、倫理の立場から、それぞれの視点で作品のテーマを掘り下げる。

【トークスケジュール】
※すべて上映後に実施。山本草介監督は連日登壇予定。

11月22日(土) 伊藤真美(花の谷クリニック院長)
11月23日(日) 吉中丈志(京都大学医学部臨床教授)
11月24日(月) 佐藤直子(東京新聞論説委員)
11月25日(火) 徳田安春(群星沖縄臨床研修センター長・総合診療医)
11月26日(水) 青木美帆(憲法学者・学習院大学教授)
11月27日(木) 太田昌国(評論家)
11月28日(金) 宮子あずさ(精神科看護師・文筆家)

『医の倫理と戦争』
11/22(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

現在の日本の医療現場が抱える様々な問題の根底には、第二次世界大戦における医療関係者による戦争犯罪への加担と、その隠蔽という事実がある。石井四郎が率いた「731部隊」に所属する医師たちは、中国人への人体実験を繰り返し、敗戦後その事実を隠蔽しただけでなく、人体実験で得た“ 知見” を自らの功績にかえ、戦後⽇本の医学界の中心に上り詰めた。そうした負の歴史と向き合い、「医の倫理」を掲げて戦争反対の声を上げ続ける医療関係者たちがいる。731部隊の真実を追いながら、現在の医療現場が抱える様々な問題に取り組む医療関係者たちの今を取材した。

出演:天羽道子、五十風逸美、池田恵美子、伊藤真美、川嶋みどり、徳田安春、宮子あずさ、吉中丈志 ほか
監督・撮影・編集:山本草介
企画:伊藤真美
共同製作:安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会、シグロ
配給:シグロ 配給協力:ミカタ・エンタテインメント 宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
2025年/日本/77分/ドキュメンタリー
©2025 Siglo

公式サイト:https://inorinri.wordpress.com

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