幻のカカオ「Nacional」を追う4年の旅──長編ドキュメンタリー『The Taste of Nature II 幻のカカオを探して』12月6日よりPrime Videoで配信

100年前に絶滅したとされていたカカオ品種「Nacional(ナショナル)」の謎を追い、南米からアフリカまで4年間にわたり撮影されたドキュメンタリー『The Taste of Nature II 幻のカカオを探して』が、12月6日よりPrime Videoで配信される。国際映画祭で高い評価を受けた前作『The Taste of Nature 世界で一番おいしいチョコレートの作り方』(2021)の続編だ。

「Nacional」は19世紀〜20世紀初頭、エクアドルで栽培されていた最高級カカオとして知られ、フローラルかつフルーティーな香りで欧州のショコラティエから重宝されていた。しかし2つの風土病により壊滅し、100年前に“絶滅”したと考えられていた。ところが2007年、ペルーの山奥の小さな村で、Nacionalと同一DNAを持つカカオが突然発見される。業界を揺るがす発見をきっかけに、クラフトチョコレート専門店「green bean to bar CHOCOLATE」代表であり写真家の安達建之が、その軌跡をたどる旅に出た。

本作には、南米ペルー、ボリビアの研究所、アフリカ・タンザニア、さらにbean to bar文化の根付いたサンフランシスコなど、世界各地をめぐる映像が収められている。山岳地帯の農園からアフリカの赤土の大地まで、4年間の取材を通して記録された豊かな風景と人々の生活は、作品の大きな魅力だ。

旅を進める中で浮かび上がるのは、単なる「幻のカカオ」の物語にとどまらない、農家の貧困や市場構造といった現実だ。希少品種の価値をめぐる思惑、伝統品種を守ろうとする人々の情熱、土地で生きる家族の営み──安達監督は「最初はカカオを追っていたはずが、気づけば人間を追っていた」と語る。作品は“チョコレートの裏側にある人間の物語”を丁寧に描き出す。

出演者には、世界的なカカオ専門家クロエ・ドゥートレ・ルーセルが名を連ねる。彼女の知見を通して、カカオの歴史・文化・流通の立体的な背景が示され、ナショナル種がもつ特別な価値に迫る内容となっている。

安達はネイチャーフォトグラファーとしても活動しており、アフリカや中南米で撮影した多数の写真作品を発表してきた。2019年にはボリビアに研究所を設立し、品種保存や発酵技術の研究にも携わるなど、カカオへの長年の探究心が本作の根幹にある。映像には、その蓄積がそのまま深みとして表れている。

“偶然みたいな奇跡”を信じて旅を続けた先に、何が見えてくるのか。絶滅したはずのカカオを巡る事実と、人々の営みが折り重なる“本当にあった奇跡の物語”が記録された作品となっている。

『The Taste of Nature II 幻のカカオを探して』
2025年12月6日(土)Prime Videoにて配信

監督/出演:安達建之
出演:クロエ・ドゥートレ・ルーセル ほか
Story Producer:壽福憲太
Production Manager:中村まりな
Produced by:UNCOLORED
2025|日本|62分|ドキュメンタリー
配給:UNCOLORED

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