本気の人間は、面白い。奈緒、野島伸司ら登壇「TBSドキュメンタリー映画祭」3日間舞台挨拶レポート
歴史的事件から現代社会の動き、市井の人々の営み、そしてカルチャーまで。TBSテレビおよびJNN系列局の記者・ディレクターたちが現場で掴み、世に送り出してきたドキュメンタリーの集積として開催されている「TBSドキュメンタリー映画祭」。現在、東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催中だ。
3月20日から22日にかけての3日間には、俳優の奈緒、TBSアナウンサーの田村真子、脚本家・野島伸司ら多彩なゲストが登壇し、計9回にわたる舞台挨拶が実施された。本稿では、そのうち複数作品の舞台挨拶の模様をレポートする。
■3月20日(金・祝)
『田村真子 のと鉄道 明日へ向かう旅』
登壇者(敬称略):矢島公紀監督、田村真子(TBSアナウンサー)
記事はこちら➡「能登のことを忘れないでほしい」田村真子アナ、映画『田村真子 のと鉄道 明日へ向かう旅』舞台挨拶で震災から2年の現地を語る
『死刑宣告の女性弁護士 アフガンからの脱出』
登壇者(敬称略):加古紗都子監督、瀬谷ルミ子(認定NPO法人『REALs』理事長)
排外主義が広がる世界で、新たな人生を切り拓く難民たちを追った『死刑宣告の女性弁護士 アフガンからの脱出』の舞台挨拶では、加古紗都子監督、ゲストに瀬谷ルミ子氏(認定NPO法人『REALs』理事長)が登壇。アフガニスタンの紛争地における人道支援活動における困難や、国際情勢の厳しさ、そしてその中で人々が抱える課題や希望について語り合った。
加古監督はタリバン政権下での女性の人権侵害に触れ、瀬谷氏は自身の経験を交えながら人道支援活動の難しさや、その背後にある国際的な問題点について解説。瀬谷氏は「戦争はニュースになりますが、日々の平和の活動が取り上げられることは少ない。1人でできることは限られる中で、いろんな方たちが力を集結させて、今も人の命を救うことができています。様々な国に退避されている難民の方々は、皆さんが『孫の世代まで日本人のおかげで命をつなげたことを語り継ぎます』と言ってくださいます。紛争地に行くと、『日本は、世界から敗戦国だと言われた状態から復興し、今では世界のどこにも軍事支援を行わず、人道支援には尽力している国だ』と言われることがあります。そのうえで、『日本の企業が来てくれるような国にしたい』ということを言われるんです。それはお金を積んでも買えないこと。日本が未だに持ち続けているその価値がなくなる前に、私たちでまた新たな価値を作り上げる事ができるんじゃないかと、この映画を見て改めて感じました」と感想を述べた。加古監督は「瀬谷さんがおっしゃった通り、日本がこれまで世界で築き上げてきた信用や信頼が、こういう世の中だからこそ発揮されたらいいなと思います。中東情勢イラン外交を巡っても、対イランということに関しては日本は独自の歩みを続けてきましたし、そこで発揮できるリーダーシップというものは必ずあるんじゃないかなと思います。この映画をご覧いただいて、私たちが平和を作るために何ができるのかと言うことを考えるきっかけにして頂けたら」と思いの丈を語った。
『野島伸司 いぬ派だけど ねこを飼う』
登壇者(敬称略):津村有紀監督、野島伸司(脚本家)
脚本家の野島伸司に初密着した『野島伸司 いぬ派だけど ねこを飼う』の舞台挨拶は、津村有紀監督、被写体であり脚本家の野島伸司が登壇。先日に続いて2回目の登壇とあってか、少しリラックスした雰囲気の野島は、「普通に居酒屋で食べて飲んだりしていて、気が付いたらカメラ回してんじゃん!みたいな感じを繰り返されてました。やっているうちに、『夜の居酒屋のシーンばかりなんで、昼の絵が撮りたい』とか図々しいこと言われてですね…普段あんまり外に出ないんですけど、行ってみたら意外と爽やかな空気の中で気持ち良かった」とぼやきながら撮影を振り返った。監督は、「野島さんと一緒に居酒屋で飲んでお話をしていた時に、自分の中には 4 人の人格がいると。4 人の人格が色々会議をしながら、今回はこういう脚本でいくかとか、そういうことを考えてやっていると聞いた時に、この話はもっといろんな方に届けて残すべきなのではないかと思いまして、映画を作りました」と、制作のきっかけを明かした。
客席には、野島と関係性の深い脚本家の伴一彦氏と、ドラマプロデューサーの伊藤一尋氏も来場。お二人からも映画の感想が語られ、野島のデビュー当時を振り返る場面もあり、その歩みを感じさせるイベントとなった。
最後に監督は、「野島さんは『孤独や寂しさを感じたことがない』と、映画の中でもおっしゃっています。野島さんは1人を楽しめる方だなと思っていて、お話ししていると、自分の中に未知なるいろんな世界がもっとたくさんあるんじゃないかと感じさせられます。この映画をご覧になった方にも、もっと自分を楽しもう、大切にしよう、そんな気持ちになっていただければ嬉しいです」とコメントした。
■3月21日(土)
『ブルーインパルスの空へ』舞台挨拶①
登壇者(敬称略):渡部将伍監督、江尻卓(江尻卓2等空佐 ブルーインパルス飛行隊長)
2025年シーズンの航空自衛隊ブルーインパルスを追う初のドキュメンタリー『ブルーインパルスの空へ』の舞台挨拶が行われた。当日は、本作を手がけた渡部将伍監督、江尻卓2等空佐(ブルーインパルス飛行隊長)が登壇。渡部監督は、映像の迫力や普段見ることのできないバックステージの様子を追求したことについて語り、江尻隊長は映像の質の高さに加え、隊員の人柄がより伝わる内容になっていると力を込めた。また、映画で密着した松浦翔矢パイロットの努力の姿勢や、チームワークの重要性についても熱いトークが繰り広げられた。
渡部監督から江尻隊長に「機内の映像は江尻さんたちが見ている景色にどれだけ近いのかが気になっていて」と質問も。江尻隊長は「私は先頭の一番機なので、他の隊員が見ているような景色はあまり見ることがないんです。ですが、映像を見るとほんまに近いな!と思いました」と映像の迫力を称えた。
最後に渡部監督は「今、イラン情勢がすごく不安定な中で、中東から自衛隊機が任務を終えて帰ってきました。僕たちは当事者の気持ちを完全に理解することはできませんが、そうした任務にあたっている方々がいるということを、まず知っていただきたいと思います。また、そもそもなぜブルーインパルスの展示飛行が今、この日本でできているのか? もし日本がイランと同じような情勢になった時、果たしてブルーインパルスは飛べるのか?そうしたことを考えるきっかけになれば嬉しいです。逆に飛べている今のこの状況がどういう状況なのかについても、ぜひ一度思いを巡らせて頂けたらいいなと思います」と話した。江尻隊長は「我々が飛ぶことの理由は、航空自衛隊を知ってもらうこと。そして、我々が飛べるのは平和があるから。24 時間誰かがこの国を守ってくれている。それを我々は感じつつ、そしてその人たちの頑張りを、国民の皆様に伝えることも我々の仕事の 1 つだと思っております。我々を見つつ、国をみんなで守っていきましょう」と熱い思いを語った。
『ブルーインパルスの空へ』舞台挨拶②
登壇者(敬称略):渡部将伍監督、渡部琢也(渡部琢也 前松島基地司令)
『ブルーインパルスの空へ』21日2回目の舞台挨拶には、渡部将伍監督、前松島基地司令の渡部琢也氏が登壇。冒頭、渡部監督が「僭越ながら、舞台上ではワットさんと呼ばせていただいてもよろしいでしょうか?」と、渡部前司令を愛称で呼ぶことを伺う場面もあり、終始笑顔の絶えないイベントとなった。
渡部氏は、「松浦(本篇のメインの被写体である松浦翔矢1等空尉)すげえな!って思いました。この場で話そうと思っていたことが、全て映画の中に入っていて」と感嘆。さらに、「映像の編集に苦労されたと聞いていましたが、実際に鑑賞すると、私が登場した時でも見たことのないような、迫力のある映像で!本当にありがとうございます。素晴らしいです」と手放しで絶賛した。松浦隊員の勇姿は、ぜひ劇場で確かめてほしい。
撮影に360度カメラを使用したことも話題にあがった。渡部監督は、「360度カメラって本当に文字通り全方位を記録するんです。でも世の中に出るのは、皆さんが見ている映像だけです。そのため、まず360度映像の中身を知るには正面分を見て、横を見て、左を見て、上を見て…あらゆる映像を見たうえで、この時間の時に、2 番機はこういう動きをするな、5 番機はこういう動きだなと、全部メモをしていきました」と説明。さらに、「滑らかな動きで他の機体を覆っていく様子や、スモークをくぐる様子もありますが、360度カメラを使う以上は、これぐらいじゃやらないといけないと思っていました。編集は地獄の日々でしたけど、やって良かったなと、こうやって皆さんのお声を聞いて思いますね」と渡部監督は、感慨深げに振り返った。
また渡部氏は、ブルーインパルスの役割や安全への意識についても言及。さらに本作について、努力を続ける人たちの姿を伝えるメッセージとして、若者だけでなく大人にも届く作品になっている、と感想を語った。
『バース・デイ劇場版 余命1年のシングルマザー ~天才相撲少年への遺言~』
登壇者(敬称略):飯田晃嘉監督、林将也監督、市川紗椰(モデル)
余命宣告を受けたシングルマザーと天才相撲少年との5年間の記録『バース・デイ劇場版 余命1年のシングルマザー ~天才相撲少年への遺言~』の舞台挨拶に飯田晃嘉監督、林将也監督、本作のナレーションを務めたモデルの市川紗椰が登壇。
豊田親子を5年間追い続けた林監督は、「倫之助さんが横綱を目指す様子を取材を進める中で、亡くなる直前まで取材を快く受けてくださったお母さんの豊田住英さんと倫之助さん、そしてご兄弟には感謝しています。もうその一言につきます」と挨拶した。
市川は本作について、「倫之助さんの人柄が本当に素敵で、生き様に全てが出ていると思いました。相撲という競技はシンプルながらも、いろんなものを背負って力士が土俵に上がっているというところに魅力があると思います」とコメント。ナレーションに市川を抜擢した理由を聞かれた飯田監督は、「ナレーションの上手いプロの方というよりも、相撲を愛している方にということで、すぐに市川さんの名前が僕の中で浮かびました」と明かした。
また林監督は、「倫之助さんは、人前では家族や友人にも決して自分の弱い姿を見せない子です。それは彼の中で強がっているところもあるんですけど、5年間接する中で、悲しい時は 1人でベッドで泣いたりする姿をよく見てきました。いろんな方に気を遣う本当に優しい子ですが、一方で芯の部分はどんなことでも折れない本当に強い子です。今後いろんな壁にぶち当たるとは思いますが、倫之助さんが乗り越えてくれることを願っています」と、今も相撲道に励む倫太郎さんを慮った。
最後に飯田監督は、「この映画のサブタイトルに『天才相撲少年への遺言』とあるように、お母様の遺言でもある、こういう生き様をみなさんに見ていただいて本当に感謝しています」とコメント。市川は「皆さんも、倫之助さんを応援したいという気持ちになられたのではないでしょうか。立派な力士になる姿を見たい、大好きになったと――そう感じた方もいらっしゃると思います。どこか天性の愛され力を持っている倫之助さんを、これからもみんなで応援しましょう」と、未来の大横綱への期待を口にした。そして林監督は、「映画を通して、倫之助さんのことをより深く知っていただけたと思います。彼は注目されれば注目されるほど伸びるタイプです。彼の人柄や相撲に取り組む姿勢など、彼の人間的なところも含め応援していただけるとありがたいです」とコメントし、三者三様に倫之助さんを最後まで応援する姿が印象的なイベントとなった。
■3月22日(日)
『War Bride 2 奈緒と4人の戦争花嫁』舞台挨拶①
登壇者(敬称略):川嶋龍太郎監督、奈緒(俳優)
戦後アメリカへ渡った「戦争花嫁」を俳優・奈緒が追った『War Bride2 奈緒と4人の戦争花嫁』の舞台挨拶に川嶋龍太郎監督、そして舞台『WAR BRIDE −アメリカと日本の架け橋 桂子・ハーン−』で主人公・桂子役を演じ、川嶋監督と共に取材をした俳優・奈緒が登壇。
川嶋監督は「まずはこの 4 人の戦争花嫁の方々のお話を皆さんに届けられたことがとても嬉しく思っております。しかもお客様の中には小学生や中学生の方だったり、届けたい皆様にお越しいただけているのを見て、本当に嬉しく思っています」と感謝。奈緒も「この映画を編集している時と同時に、私は桂子さんの役を舞台で演じていたので、本当にずっと桂子さんがそばにいるような気持ちでした。舞台をやって、稽古をやって、編集室に行って、監督と一緒に映像を見ながら、どんな言葉にしたら皆さんに伝わるか?というようなことを考え、一緒に走ってきました」と、監督と共に歩んできたことが形になった今の心境を明かす。
MCから、舞台裏でも二人がとても親密なコミュニケーションが取れている印象だと言われ川嶋監督は「家族みたいな感じなんです」と話し、二人とも舞台上で笑顔が絶えない。川嶋監督は、伯母である桂子さんに奈緒さんを紹介した際のことを思い返し「桂子さんに奈緒さんという俳優が桂子さんの役をやるんですよ、奈緒さんを連れて取材に行くよって伝えてもあまりピンと来ていない。なので、奈緒さんの映像とか CMを送ったんです。そのうちに気が付いて『あれ?龍太郎、もしかして奈緒さんって有名な人なのね?』と言われたんです。20歳で海を渡って、約75年間アメリカにしかいないから奈緒さんの映像を見ても、有名な人なのかな?と思いながらわからないんですよね。取材の時にお会いして、桂子さんも『こんなに聡明な人が私の役をやってくれるんだ。すごい嬉しいと思った』とおっしゃっていたのが印象的でした」と話した。
今回の映画や舞台、 TBSの番組などでも戦争に関する取材の機会があった奈緒は、伝えたいという源や、動機について聞かれると「平和を願う気持ちです。今皆さんがこの映画を選んで座ってくださるっていうことは、同じ思いだと思うのですが、今の世界情勢になる前から、平和を願わない人というのはなかなかいないんじゃないかな?と思っています。私も普遍的な平和を願う小さな 1人ですが、その中で自分に何ができるんだろう?と考えた時に、こういったお仕事をしていますので、きっかけがあれば伝える役目というのは続けていきたいなと思っています。そして、みんなで考え学ぶ時間というのはいかに幸せな時間かというのを、身に染みて感じています。皆さんと一緒に学ぶ時間というのを積極的に持っていけたらいいなと思っています」と平和を願う思いを述べた。
最後に奈緒は「桂子さんにこの映画が完成したことを届けられ、皆さんがどういうお顔でこの映画を見てくださって、どういう感想をくださったということも、私たちは桂子さんに伝えてまいります。この映画がどこか皆さんの琴線に触れたとしたら、お言葉をいただけたら嬉しいなと思っております」とコメントし、川嶋監督は「今日ここに座っていらっしゃる、私の前の映画をご覧いただいた方と少しお話したんです。私(監督)の伯母さんの話なんだ、それを映像にまとめているんだ、となるともしかしたらご自身の家族も何か戦争体験をしたんじゃないかと、それを聞いてみようと思ったとおっしゃって頂きました。それが嬉しくて。まさにそのためにこの活動をしているような気がするので、まずは今回の映画が、どんどん全国の皆さんに見ていただけるようにしていきたいです。」と思いの丈を話し、イベントは温かく終了した。
『War Bride 2 奈緒と4人の戦争花嫁』舞台挨拶②
登壇者(敬称略):川嶋龍太郎監督、安冨成良(嘉悦大学元教授 戦争花嫁研究家)
『War Bride2 奈緒と4人の戦争花嫁』22日3回目となる舞台挨拶が行われ、川嶋龍太郎監督と安冨成良(嘉悦大学元教授 戦争花嫁研究家)が登壇。
長年、戦争花嫁を研究している安冨氏は、「情熱的で本当に素晴らしい。ご自身の伯母さんを題材にしている点もありますが、何よりこの戦争花嫁の当時者たちに光を当てたいという思いがビンビンと伝わってきます。(研究者である)私自身が逆に刺激を受け、学ぶことが多いです。これからどのように展開していくのか興味は尽きませんが、必要とされる限り私も協力していきたいと思います」と語り、会場の笑いを誘いながら川嶋監督の取材活動を賞賛した。
川嶋監督は、「4 人の戦争花嫁の方々は、どなたもこれまで歴史の中でスポットは当たっていない、教科書にも当然載っていません。しかし、アメリカに渡ってたくましく、90歳をすぎた今もなお輝いて生きていらっしゃる方々にしっかりとスポットを当て、その方々のお話を記録して、必ず届けていきたいと思っています」と語った。さらに、「今日ご覧いただいた皆さんをはじめ、奈緒さんと同世代の方々や、その次の世代にも伝え、語り継いでいきたいと思っています。そのためには記録映像として残すことがとても大切です。『95 歳の方がこういうことを言っていたんだ、だからこういうことをしちゃいけないんだ』『今イランで戦争が起きている、戦争が起きないためにはどうすればいいんだ?』ということが改めて学べる教材と言ったらおこがましいですが、そうした役割を果たせればと思っています。これからも戦争花嫁の皆様の取材を続けていく気持ちです」と熱いメッセージで幕を閉じた。
<開催概要>
「第6回 TBSドキュメンタリー映画祭2026」
2026年3月13日(金)より東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催される。
※一部の作品は上映されない会場があります。
東京:ヒューマントラストシネマ渋谷|3月13日(金)〜4月2日(木)
大阪:テアトル梅田|3月27日(金)〜4月9日(木)
名古屋:センチュリーシネマ|3月27日(金)〜4月9日(木)
京都:アップリンク京都|3月27日(金)〜4月9日(木)
福岡:キノシネマ天神|4月3日(金)〜4月16日(木)
札幌:シアターキノ|4月4日(土)〜4月10日(金)
主催:TBSテレビ
公式サイト:https://tbs-docs.com/2026
公式X:@TBSDOCS_eigasai















