【TBSドキュメンタリー映画祭2025】3 /21~3/23で実施された舞台挨拶の模様をお届け!ドキュメンタリー映画でしか実現できない様々なジャンルの豪華ゲストが登場! 奈緒(女優)、安田浩一(ジャーナリスト)、菊池哲男(山岳写真家)、一双麻希(女優)、今村翔吾(歴史・時代小説家)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)ら登壇!
TBSテレビやTBS系列各局の記者やディレクターが、歴史的事件、現在進行形の出来事、そして市井の人々の日常を追い続け、記録し、情熱を込めて世に送り出してきたドキュメンタリーブランド「TBS DOCS」。5回目の開催となる今年度も、ヒューマントラストシネマ渋谷にて日々、様々な作品の監督、出演者や多彩を招いて舞台挨拶を実施。今回、3 月 21 日(金)、22 日(土)、23 日(日)の 3 日間で実施された舞台挨拶の模様をお届けします。
東京での開催は、4 月 3 日(木)まで。3 月 28 日(金)〜4 月 10 日(木)の日程で、大阪はテアトル梅田、名古屋はセンチュリーシネマ、京都はアップリンク京都、福岡はキノシネマ天神の各会場で開催。札幌はシアターキノにて 4 月 5 日(土)〜4 月 11 日(金)の日程で順次開催となる。
<3 月 23 日(日)実施 舞台挨拶>
『War Bride 91 歳の戦争花嫁』
【登壇者】 監督:川嶋龍太郎/ゲスト:奈緒(女優)
終戦から 5 年後の 1951 年、20 歳で米軍の兵士と結婚し、海を渡った桂子・ハーンの人生を、当時の世相と共に描いたドキュメンタリー映画『War Bride 91 歳の戦争花嫁』。今回、映画祭の“戦後 80 年企画”として再上映され、川嶋龍太郎監督と、本作を原案とした舞台『WAR BRIDE -アメリカと日本の架け橋 桂子・ハーン-』の主演に決定した奈緒が舞台挨拶に登壇した。
映画を手掛けた川嶋監督は、「今年は戦後 80 年という節目の年です。このタイミングでまた皆さんに見て頂けて光栄です。」と挨拶。「いま戦争体験をされた方たちは、90 歳を超える方が多く、お話を聞ける機会がすごく減っています。この映画では私の叔母である桂子・ハーンの他にも、何人かの花嫁さんにもお話を聞けました。それをしっかり映像で伝えて、これからの未来を作る若者たちに届けて、戦争について考えるきっかけになってほしい。」と作品をアピールした。
舞台で桂子・ハーンを演じることについて、奈緒は「とても光栄に思います。今年で 30 歳になったのですが、舞台のお話を頂いたときは、20 代最後の年を過ごしていました。映画を観て、これは自分と同じような年代の子たちが、一緒に深く考えられる題材なんじゃないかと感じました。責任感を持って最後までやり遂げたいです。」と意気込みを語った。舞台の企画にも携わっている川嶋監督は「私の叔母である桂子・ハーンは、とても優しくて、すごく芯のある人。20 歳ときにアメリカのオハイオに渡って 70 数年。今でもボランティアで日本とアメリカを繋ぐ活動をしています。この芯の強さを演じられる女優さんを考えたとき、奈緒さんしかいないと思ったんです。演じて頂けて光栄です。」と話すと会場からは拍手が上がった。
川嶋監督と奈緒は、今年の 1 月にアメリカで桂子・ハーンと対面したという。その時に撮った写真がスクリーンに投影されると、奈緒は「たくさんお話をして、思い出の場所にも連れて行ってもらいました!桂子さん以外にも、現地の市長ともお話しする機会を頂いたんですが、桂子さんがこの土地で、どれだけの人に愛されているのか、すごく肌で感じることが出来ました。」と笑顔で振り返る。川嶋監督は「『舞台で主演をやる奈緒さんだよ』と紹介したんですが、最初はピンときてなかったんですけど、『何かすごく有名な女優さんなんじゃないか?』と途中で気づいたみたいで驚いていました。」と話すと、奈緒は「本当に喜んでくださって、『今度、舞台化してくれるのよ!奈緒さんよ!』って、会う人、会う人、街中の人に私を紹介してくれて(笑)本当にうれしかったですね!」と桂子とのエピソードを話した。
川嶋監督はドキュメンタリーで伝えるということについて訊かれると、「私は普段、ドラマ制作部でフィクションの物語を作っているんですが、ドキュメンタリーは真実を伝えていく場だと思っています。その真実の物語を、今年は戦後 80 年というタイミングなのでしっかりと伝えていきたい。」とコメント。奈緒は「ドキュメンタリーは、見なければいけないものという思いがあります。自分は普段エンターテイメントを作る中に携わっていますが、ドキュメンタリーは現実。日本は、映画やアニメだったり、何かを想像して作ることが得意な国民だと思います。だからこそ、ときには現実と意識的に向き合うことで、私たちはより豊かになれるんだと思います」と述べた。
最後に奈緒は、「桂子さんはお花が大好きなので、今日はお花柄の衣装を選んだんですが、きっと当時は好きなお花一本選ぶことができない時代だったと思います。今、私は家に帰ると好きなお花が花瓶に生けてあるんです。そういう時代に何故、自分が生きられているのか、しっかりと自分の同世代にも、希望ある若い世代にも伝えていけるよう、桂子さんから受け取ったパワーを、たくさんの方伝えられるように頑張っていきたいです」とメッセージを送った。
『巣鴨日記 あるBC級戦犯の生涯』
【登壇者】 監督:大村由紀子/ゲスト:内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)
敗戦後、BC級戦犯として東京・豊島区にあったスガモプリズンに収監され、戦犯死刑囚という過酷な体験をした冬至堅太郎の手記に迫った『巣鴨日記 あるBC級戦犯の生涯』。舞台挨拶には大村由紀子監督と、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)が登壇。
大村監督は本作を手掛けたきっかけを訊かれると、「10 年前に、福岡にある碓井平和祈念館で藤中松雄さんの遺書が展示されていたのを見ました。その時は、BC級戦犯について知識がなかったんですが、実物の遺書を見た時、これは何か伝えなければいけないものを見てしまったと、そんな気がしたんです。そこから勉強をして、リサーチを重ねてきました。」と語る。
また、大村監督は取材を進めていく中で、戦犯を持つ遺族から話を聞くことが難しかったと話す。「もう触れないでほしいと、まず断られてしまいます。今の価値観で“戦犯”というと、刑事裁判にかかった犯罪者と同じように捉えられるところがあります。戦争中は、人を殺すのがあたりまえの世界で、しかもそれは命令されてやったことなんですが、『家の恥だから出さないで』と断られてしまうこともありました。」と、取材時を振り返る。
さらに、戦犯関係の資料や公文書を調べることも苦労したという。「1999 年頃から法務省が保存していた資料の公開が公文書館で始まったんですが、この人が誰なのか、資料の名前なほとんどが黒塗りなんです。いろんな片鱗で見えるような名簿を入手して、お一人お一人、検証する作業がすごく大変でした。」と話すと、内海教授も、公文書の資料について「のり弁状態でしたね。戦争犯罪ですから、その人が特定できる資料などは黒塗りにされていました。最近になって、ようやくフルネームで名前が分かるようになってきたんです。」と付け加えた。
本作を見た感想を訊かれた内海教授は、「この映画を観て圧倒されました。こういう戦争裁判の記録から、今の私たちに、そして次の世代に投げかけてくれた大村監督の作品に心から敬意を表したいと思います。」と声を震わせながらコメントした。さらに、「同じ戦犯と言っても、韓国、朝鮮人、日本の植民地だった人々が戦争に動員され、戦争犯罪人として処刑されている。私はその事実を知ってこの問題に関心を持ちました。横浜軍事法廷で裁かれた冬至さんは、スガモプリズンの中でこれだけ記録を残せましたが、海外の法廷で裁かれた戦犯たちはどういう思いだったか。記録も遺書も遺せなかった。冬至さんの記録の中から、刑死した 920 人の想いを、どう汲み取り、考えていくのか。問題としては広がっていくと思います。」と訴えた。
大村監督は「過去のことを提示しても『それで?』『今の戦争を止められないじゃないか!』と言われることがあります。しかい、知るところから始めないと、次には進めないと思います。なんで今こういう状況になっているのか。後ろから始めないと、ウクライナやガザなどは見れない気がするんです。この映画が平和考える最初の一助になるように、より多くの方に観て頂きたいです」と願っていた。
<3 月 21 日(金)実施 舞台挨拶>
『あの日、群馬の森で ―追悼碑はなぜ取り壊されたのかー』
【登壇者】 監督:三宅美歌/監督:日下部正樹/ゲスト:安田浩一(ジャーナリスト)
「群馬の森」に設置されていた朝鮮人追悼碑の取り壊し問題にフォーカスし、全国に広がる歴史修正の動きに迫るドキュメンタリー。本作で初めて長編を手掛けた三宅監督は、追悼碑撤去問題をテーマにしたことについて「2017 年の関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式を取材したとき、こういう形で追悼している人たちがいることに、私自身も救われた気持ちになりましたが、その場所で『あれは無かった!』と声を上げている人たちは一体何なんだろうかと。安田さんの講演会でも各地で同じことが起きている事と知り、『これはただ事ではない。もっと深掘りしたい。』と思いが、今に繋がりました」と取材動機を話した。
自身も追悼碑撤去の現場を取材している安田は、本作を観て「三宅さん、日下部さんが立っていた現場に私も立って、同じ風景を見てきました。いま、日本の社会で一体何が起こっているのか。この映画から伝わってくるのは、日本社会がきしむ音であり、壊されていく音。そこをしっかり分かりやすく捉えてくれた。」とコメント。さらに「私の中にある憤りとか、絶対に許してはなるものか、という気持ちをさらに煽りたて扇動してくれたことに感謝したい」と両監督に賛辞を送った。
日下部は、本作を取材する中で感じたことを訊かれると、「歴史否定を主張するグループや人物というのは昔から居たわけですが、彼らの主張が完全否定されず、何となくの雰囲気で受け入れられてしまっている。」と述べ、さらに、反対派の抗議もネットの登場で激しさを増したことが要因にもなっていると語り、「行政が抗議に対して圧倒的に弱くなり、中立公正ばっかりになってしまっている。ネトウヨ団体の言っていることは、決して珍しくも新しくもないのに、受け入れられてしまっている空気が日本中に漂っている。」と現状を危惧した。
舞台挨拶の最後に三宅監督は「ひとつの追悼碑の裏には色んな人がいました。対立する両側の意見を盛り込みつつ、俯瞰して見るような想いで作りました。この話題の複雑さを感じて頂いて、皆さんの中で色々と考えて頂ければ嬉しいです」と訴えていた。
<3 月 22 日(土)実施 舞台挨拶>
『小屋番 KOYABAN~八ヶ岳に生きる~』
【登壇者】監督:深澤慎也/企画・プロデューサー:永山由紀子/ゲスト:菊池哲男(山岳写真家)/一双麻希(女優)
「コヤガタケ」と呼ばれるほどに山小屋が多い八ヶ岳を、山岳写真家菊池哲男と巡るドキュメンタリー。当日は、晴天で温かく絶好の登山日和の中で開催された舞台挨拶。満席で迎えられた深澤監督は「皆さん山好きだと思うので、みんな山に行っちゃったらどうしようかなと思ってました(笑)」と挨拶。この日の舞台挨拶は、チケットの発売開始わずか8分で売り切れたという盛況ぶり。永山プロデューサーは「22 日の 0 時に発売されたんですが、その 8 分後には私のところに『買えなかった!』とお怒りのメールが何通も届いておりました(笑)その方たちには、ぜひ平日の回にとご誘導させて頂きました。」と笑顔で報告した。
前回の舞台挨拶では、自身の YouTube チャンネルで生配信した一双。今回はインスタグラムでの生配信を行いながら登場すると、遠方で会場に来れなかった山小屋の方々から「見てますー」とコメントが届いていると紹介した。本作の見どころを訊かれると、一双は映画冒頭の根石岳山荘のシーンを挙げ、「山小屋から見える朝日も夕日もすごく綺麗で、本当にきるパワーがいてくるところなんです。小屋番の佐藤さんのインタビューは心に響きました。」と紹介した。
菊池は自身の登場シーンを紹介。昨年末に放送された TBS『解放区』で、自分がストーリーテラーで出演すると宣伝していたのに、実際はほとんど映っておらず周りから「聞いていた話と違う」と言われてしまったと話すと、今回の映画では、黒百合ヒュッテのインタビューシーンで「暖炉の前で暑いくらいなのに、アウターを着て、帽子もロゴが見えるように被って、ニコンのカメラも目立つように持ちながらやりました」と話す。続けて、「僕が映らないと、サポートしてもらってるところのロゴが映らないので、別に自分が出たくて言ってるわけじゃないですよ!」と話して会場を笑わせた。
本作の苦労話を訊かれると、深澤監督は「少人数で作らなければならなかったので、それでどこまで出来るのか正直不安でした。」と、撮影時の気持ちを吐露。しかし、大勢の観客を前に涙を滲ませながら「思い返すと大変なことは色々ありましたが、この映画は八ヶ岳の小屋の方々の協力無くしては出来きませんでした。あちこち撮影するときに『いいよ。泊まりな』と言ってくださったり、撮影が無い時でも支えてくれました。」と声を震わせながら感謝を述べ、会場に訪れていた双子池ヒュッテを営む米川夫妻をはじめ、撮影を支援した八ヶ岳の関係者を紹介すると、会場から拍手が巻き起こっていた。
『巨大蛇行剣と謎の 4 世紀』
【登壇者】 監督:山﨑直史/ゲスト:今村翔吾(歴史・時代小説家)
2022 年、奈良市の富雄丸山古墳で見つかった 2 メートル 37 センチに及ぶ巨大蛇行剣を巡る、ロマン溢れるドキュメンタリー。ゲストの今村氏を TBS「N スタ」のコメンテーターに抜擢し、プライベートでも食事にいくほどの間柄という山﨑監督は「今村先生は、ご出身が京都で、中学・高校が奈良。しかもデビュー前は発掘調査のお仕事をなさっていたという。これ以上のゲストはいないだろうと、今回の舞台挨拶のゲストをお願いしたんです!」と興奮気味に紹介。
そんな今村は、山﨑監督が持つ巨大蛇行剣パネルを見ながら「本当にすごい発見でしたね。これはかなりすごい!僕は確実に国宝になると思っています。」と声を大にして語った。
山﨑監督から、なぜ巨大な蛇行剣が作られたと思うかと訊かれると、今村は「これは本当に難しいですね。映画の中でも専門家たちが『その可能性がある』とか『そうなる見込みがある』とか断定はしない。あれは逃げて言っているわけじゃなくて、本当に分からないんです。だからそういう分からないことは、保存して未来に託すんです。」と保存科学の重要性を語った。さらに、「皆さんは巨大蛇行剣が儀礼のために作られたと思われるでしょうけど、僕は実際に使ってたやつがいるんじゃないかと思ってます!小説家的には、これをブンブン振り回すキャラクターを作って、すごいアクションをさせたい!そういう可能性もあるってところが考古学の魅力ですよね。」と持論を述べると、会場からは拍手が上がった。
山﨑監督は巨大蛇行剣について「当時の日本では鉄が取れなかった。すごい貴重な鉄をわざわざこんなことに使っていたんですよね。」と話すと、今村氏は「勾玉などに使われている貴重品の翡翠(ひすい)がありますが、その代用品として滑石(かっせき)というものを使った廉価品みたいな、“ジェネリック”勾玉が作られているんです。トップではない人の所からはそういうものが出てくるので、鉄を使った剣ということは、これは本物ですよ!鉄ブランド!」と巨大蛇行剣の貴重性を裏付けた。
そんな貴重な巨大蛇行剣を、どんな人物が持っていたと思うかと訊かれた今村氏。前方後円墳のようなトップ層の墓ではなく、円墳から出土されたことを考慮し「軍事司令官とか、信長における秀吉みたいなポジションの方だったのではないかと思います。」と考察。さらに、「実は王位継承者だったけど、何らかの理由で円墳に入れられた人とか。小説家なので勝手に色んなパターンを考えてしまいますが、かなり特殊な円墳ということは分かりますよね。」と述べた。
今回の発見と映画が、今後の作品に影響を受けるかと問われると、今村氏は「やるしかないか」と一言。山﨑監督は「古墳時代って、これまで大河ドラマとか小説とかでも、ほとんど作られて来なかったんですよね。」と話すと、今村氏は「分からない時代だからこそ、小説家からしたら恰好の餌食になりそうなんだけど、メチャクチャに書き過ぎたら宮内庁に怒られそうで怖い(笑)。戦国時代よりもっとグローバルで、渡来人もいて、宗教もひとつに固まってない時代だからエキサイティングなものになりそう。」と妄想を膨らませていた。
第5回「TBSドキュメンタリー映画祭2025」
2025年3月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国6都市にて順次開催!
<開催概要>
東京=会場:ヒューマントラストシネマ渋谷|日程:3月14日(金)〜4月3日(木)
大阪=会場:テアトル梅田 |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
名古屋=会場:センチュリーシネマ |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
京都=会場:アップリンク京都 |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
福岡=会場:キノシネマ天神 |日程:3月28日(金)〜4月10日(木)
札幌=会場:シアターキノ |日程:4 月 5 日(土)〜4 月 11 日(金)
公式サイト:https://tbs-docs.com/
公式X:https://x.com/TBSDOCS_eigasai
アナタのドキュメンタリー動画投稿で 10 万円ゲット!
「D アワード」開催中!
「TBS ドキュメンタリー映画祭 2025」開催を記念して、業界唯一のドキュメンタリー情報ポータルサイト「D 会議室」では、「ドキュメンタリー」を観る愉しさや、ドキュメンタリーという言葉の可能性とイメージを拡げる、投稿を募集する<インスパイア企画>「D アワード」を開催中(2025 年 3 月 31 日まで)。テーマに沿った自身で撮影したドキュメンタリー動画を Xで投稿して参加可能。最優秀作品投稿者には、10 万円をプレゼント。
詳しいテーマ・参加方法はこちらを参照下さい。
https://dmeetspjt.com/news/4765